「電気通信事業法の一部を改正する法律」が2019年10月1日に施行されました。
「利用者が通信料金と端末料金それぞれを単独で比較・選択できるようになり、競争が進展することで通信と端末の料金双方の価格が下がることを期待している」
以上は菅義偉官房長官の記者会見でのコメント。
本当に安くなるの?
この記事では「電気通信事業法の一部を改正する法律」の要点だけを簡単にまとめました。
詳しく知りたい方は、総務省総合通信基盤局「電気通信事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備について」でご確認ください。
電気通信事業法の一部を改正する法律の要点
電気通信事業法の一部を改正する法律(以下「改正法」という)の主な措置は2点。
- 通信料金と端末代金の完全分離(1号禁止行為)
- 行き過ぎた期間拘束の是正(2号禁止行為)
モバイル市場の競争促進と利用者利益の保護を目的に、以上の措置が法律で定められました。
1号禁止行為|通信料金と端末代金の完全分離
電気通信事業法施行規則第22条の2の16関係
端末を販売等する際の通信料金を端末を販売等しない場合よりも有利にすることを禁止。
通信役務の利用者に対する端末の販売等に際しての一定の利益の提供(総務省令で規定)を禁止。
- 通信役務の継続利用及び端末の購入等を条件として行う利益の提供⇒ 一律禁止
- 通信役務の利用及び端末の購入等を条件として行う利益の提供⇒ 2万円(税抜)を超えるものを禁止
※先行同型機種がある場合には負担額がその買取価格を下回ることも不可
<例外>
廉価端末、新規契約の受付が終了した通信方式のサービス利用者が新たな通信方式に移行するために購入する端末等、在庫端末については特例を設ける
端末代金の分割支払金が割引になる「実質0円」等は今後できなくなります。
回線契約時の端末代金の値引きは、原則2万円以内です。
2号禁止行為|行き過ぎだ期間拘束の是正
電気通信事業法施行規則第22条の2の17関係
通信契約の解除を行うことを不当に妨げることにより、電気通信事業者間の適正な競争関係を阻害するおそれがあるものとして、以下のように総務省令で定められました。
契約期間の上限 | 2年(違約金の定めがない場合を除く) |
違約金の額の上限 | 1,000円(税抜) |
期間拘束のない契約の提供 | 1年を超える又は更新可能な期間拘束契約を提供する場合、期間拘束のない契約も選択肢として提供しなければならない |
期間拘束の有無による料金差の上限 | 170円/月(税抜) |
自動更新 | 次の①~④のいずれかを満たさない自動更新を伴う契約を禁止 ① 契約締結時において、契約期間満了時※に期間拘束を伴う契約で更新するどうかを利用者が選択できること ② ①の選択によらず料金その他の提供条件が同一であること ③契約期間満了時において、期間拘束を伴う契約で更新するかどうかを利用者が改めて選択できること ④ 違約金なく契約を解除可能な更新期間が少なくとも契約期間の最終月、その翌月及び翌々月の3か月間設けられていること |
長期利用割引等の条件 | 利益の提供の範囲=1か月分の料金(税抜)/年 |
契約期間の上限は2年。途中解約の違約金は上限1,000円。
違約金が発生する2年契約の料金プランを設定する場合は、期間拘束がない料金プランも合わせて用意。また、その料金差額は170円/月以内でなければなりません。
禁止行為規律の対象となる電気通信事業者
改正法の対象となるのは、すべての電気通信事業者ではありません。
対象となるのは
- MNO及びMNOの特定関係法人については全事業者
- MVNOについては移動電気通信役務の利用者の数の割合が0.7%を超えるもの
MNOとその関連会社は対象。MVNOは利用者数が100万(割合換算で約0.7%)を超える事業が禁止行為規律の対象となります。
MNO | MNOの特定関係法人 |
---|---|
NTTドコモ | エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ、他 |
KDDI 沖縄セルラー電話 | ビッグローブ、UQモバイル沖縄、他 |
ソフトバンク | ヤフー、LINEモバイル、他 |
楽天モバイル | 楽天コミュニケーションズ |
UQコミュニケーションズ | - |
利用者数が100万を超えるMVNO |
---|
インターネットイニシアティブ |
オプテージ |
上表より対象となる格安SIM(サブブランド含む)は
IIJmio、mineo、OCNモバイルONE、BIGLOBE、LINEモバイル、Yahoo!モバイル、UQモバイル、楽天モバイル。
主な格安SIMはすべて禁止行為規律の対象です。その他のMVNOについても自主的に禁止事項に適用しているようです。
禁止行為の適用時期
改正法は2019年10月1日からの施行ですが、スマートフォン以外は一部の禁止行為について2019年末まで適用を留保されています。
スマートフォン以外とは、モバイルWi-Fiルーターが該当します。
1号禁止行為の端末代金の値引き等と2号禁止行為の期間拘束の是正については、スマートフォン以外は2019年末までに適用されます。
関連資料
「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」
総務省総合通信基盤局
令和元年(2019年)9月最終改定版
まとめ
冒頭で紹介した菅官房長官のコメントでは「通信と端末の料金双方の価格が下がることを期待」でしたが、果たして料金は下がったのでしょうか?
詳しくは調べていませんが
月額料金から端末代金の分割分が消え、一見下がったようには見えます。
端末代金も下がった機種はありますが、従来の端末代金(割引額)が高過ぎただけです。
契約縛りの規制や違約金の上限は、改正法に具体的な数字で明記されています。通信事業者が遵守するのは当然です。
通信と端末の料金については、国が民間に対して値下げを強制することはできません。だから「期待」なんですね。
ちょっと期待はずれだったかな・・・